ジルコニアの歴史
前回はジルコニアの素材についてご紹介いたしました。
今回は「ジルコニアの歴史」についてご説明していきます。
昔は歯の詰め物・被せ物といえば「金」が最高の材料でした。
金を使うことがステータースにもなり、前歯にわざわざ金歯を入れることが流行していた時期もありました。
当時、金は軟らかく歯と同じように減ることが自然で良いと言われることもありましたが、その後かみ合わせは変わらない方が顎の関節に良いという説が広まり、金よりも硬い白金加金やいわゆる銀歯と呼ばれる金パラ合金が出て、現在一般的に保険診療で使用されています。
しかし金や銀は審美性が低く、見た目が気になります。
そこで自然の歯に近いメタルボンドが使用され始めました。見た目はセラミックなのですが中は金属でできています。そのため、金属アレルギーを起こす人が現れ、接触している部分の歯茎が黒くなってしまうという欠点がありました。
白い被せ物の需要が高まり使用されていたのがセラミックです。
古くは1838年頃から歯科で使用されていました。
セラミックは天然の歯と比べても劣らない程、審美性に優れています。
しかし硬いけれど衝撃に弱くて割れやすいという欠点があるため、お口の中で折れたり割れたりと、強度に限界がありました。
そこでより強度が高い白い被せ物としてジルコニアが使用されるようになりました。
ジルコニアは1978年にマルティン・ハインリヒ・クラプロートによってジルコンから発見されました。
1824年にイェンス・ベルセリウスにより、フッ化カリウムジルコニウムをカリウムで還元することによって初めて金属分離され、国内では1944年に福島県塙町真名畑鉱山でジルコニウムの鉱脈が初めて発見されました。
歯科では1998年にDeguDent社(現Dentsply Sirona)がジルコニアCAD/CAMシステムのCercon systemを発表し、「従来のアルミナよりも強度が高いセラミック」ということで普及が始まりました。
2001年にチューリッヒ大学とDeguDent社がイットリア部分安定化ジルコニアのセルコンベースを発売しました。2002年にNobel Biocare社が焼結ジルコニアを用いたフレーム製作法を提唱し、NobelProcera systemを発表しました。
ジルコニアが日本で歯科治療に使われるようになったのは厚生労働省の認可を受けた2005年のことです。
その後、2006年~2007年になると、Lava、NANO ZR、ZENO Zr、KATANAの認可が次々とおりて、ジルコニアの普及が本格的に始まりました。
当初のジルコニアは「白いメタル(金属)」と呼ばれるように、強度は高いが透過性が低いものが主流でした。
透過性が低く、そのままでは審美性が良くないため、メタルフレームの代わりとして使い表面に陶材を盛っていました。しかし、陶材とジルコニアの強度に差があり、強いものと弱いものが同居しているがゆえの問題点が出てきました。そこでこの問題を解決する方法として着目されたのが、ジルコニア単独で被せ物を作製する方法です。その後、イットリアを多く含んだ透過性の高いPSZ系ジルコニア(部分安定化ジルコニア)が開発され、ジルコニア単体の被せ物としても使用することができるようになりました。
世に出始めた頃のジルコニアは正方晶ジルコニア多結晶体(従来型TZP)というもので、結晶相の大部分が正方晶で、約3mol%のイットリアと約0.25wt%のアルミナを含有していましたが、前述のように従来型TZPは透明度が低い欠点を有していたので最近になってこの従来型を改良したものが登場してきました。
透明度が低下する要因としてアルミナの含有量が多いことが分かり、アルミナの含有量を減少させることによって透過性の高いものの作製が可能となりました。
現在はそこからさらに改良されており、単層ではあるがグラデーションに着色された積層構造のものなど、次々と販売され始めています。
記事の著者:院長 北原 充志
私が歯科医師になろうと思ったきっかけは、両親がともに歯が悪く、苦労していたことでした。「自分が治療しておいしく食事ができるようにしよう」と考え、今ではその夢を叶えることができました。
お口は食べるだけでなく、健康にも重要な役割を担う場所。美しい歯と健康なお口でいるお手伝いをするため、研さんに励んでいます。私達にとって、家族同然の存在でもある患者さまたちの歯を長く残すため、お気軽に検診にご来院いただければ嬉しいです。
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